CHARITY FOR

不登校や引きこもりの子どもたちの力を信じ、一人ひとりが成長するための支援を〜NPO法人あめんど

全国の小中学校における不登校児は19万6,127人(文部科学省「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」より)。不登校傾向にある子どもたちは、この数の約3倍だと言われています。

さまざまな背景を抱え、不登校になる子どもたち。

「子どもたち一人ひとりに合わせて、そのニーズを拾いながら、活動に子どもたちを合わせるのではなく、子どもたちに活動を合わせるオーダーメイドのサポートがしたい」と話すのは、今週JAMMINがコラボするNPO法人「あめんど」代表であり、スクールソーシャルワーカーの恒松睦美(つねまつ・むつみ)さん(54)と、理事の恒松勇(つねまつ・いさむ)さん(55)。

「一人ひとりに合った環境を整えて、あとはそれぞれが自分のペース、自分の力で成長していける。そんな支援を大切にしたい」

そう話すお二人に、活動についてお話を聞きました。

(Zoomにてお話を聞かせていただきました!恒松勇さん(写真左)、睦美さん(写真右))

今週のチャリティー

NPO法人あめんど

滋賀県大津市を拠点に、子育て、教育、家庭における課題に取り組んでいます。発達障がいや不登校の子ども・若者への学習支援や生活支援、体験活動や就労準備支援などを通し、子どもが安心して一歩前へ踏み出せる支援を行っています。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
RELEASE DATE:2022/10/31

不登校の子どもたちを対象にした
フリースクールを運営

(いちご狩り「いちご一会」。「居場所にすら入って来ることが難しい子どもたちのために、時折『いちご一会』を開催し、親子で親しんでもらいます」)

──今日はよろしくお願いします。最初に、団体のご活動について教えてください。

勇さん:
子どもたちのニーズに合わせてさまざまな活動をしていますが、柱となるのは、主に小中学生を対象としたフリースクールの運営です。学校に通うことが難しい子どもたちに、それぞれに意味のある時間を過ごしてもらう場です。

フリースクールは平日の10時〜16時ぐらいまでオープンしています。毎日来る子もいれば、週1または週2〜3で通っている子など、時間帯や滞在の長さも利用の仕方はそれぞれ自由です。

(フリースクールにて、カードゲームで遊ぶ子どもたち。「カードゲームは初めての子ともすぐに親しくなれ、コミュニケーションを育んでくれます」)

睦美さん:
不登校の子が毎日ここに通ううちに、「だんだん元気になってきたから」と利用回数を徐々に減らして学校生活に戻っていったり、あるいは月・水はフリースクールで火・金は学校、木曜日はお休み、といったふうに、自分の心と体が疲れないバランスをとりながら一週間の過ごし方を工夫したりする子もいます。

──フリースクールには、どのような背景の子どもたちが通っているのですか。

睦美さん:
背景の一つである、発達障がいを持った子どもたちが来ています。
感覚過敏や多動傾向があったりすると、学校に朝から夕方までいるだけで、膨大なエネルギーを費やします。授業中にずっと席に座っていることが難しくなって、ウロウロして他人と違う行動をしてしまう。集団環境に馴染みにくい子どもたちですね。

(自然体験のキャンプで実施した「川の運動会」の様子。「川の玉入れ…早くしないと川下に流れちゃうよ!」)

勇さん:
自宅で多くの時間を電子ゲームで過ごしている状態の子どもたちも来ています。ここは居場所として、少数の人と関わりを持ちながら有意義に活動できる環境です。

──1日の流れを教えてください。

勇さん:
午前中は主に学習です。掃除、食器洗い、畑の水やりや草抜きなどちょっとしたお手伝いをしてもらったりもします。
食事スタッフがお昼ごはんを提供しますが、お弁当持参の子もいます。午後は300種類ほどあるカードゲームやボードゲームの中からいくつかを選んで遊んだり、外遊びや散歩をしたり、おしゃべりをしたり‥。小集団の状況に合わせながら子どもたちと関わるようにしています。

(あめんどに通っていた生徒が、今では皆に愛されるスタッフに。「私の隣、写真右が老弱男女皆に愛される若手スタッフです。不登校を経験したとは信じられない明るさで、子どもたちの憧れと目標になっています」)

一人ひとりが肩の力を抜き、
自然体でいられる環境を

(夜の子どもの居場所「トワイライトステイ」の様子。「トワイライトステイでは、家族のように夕食を共にします。大学生ボランティアのお兄さんとお姉さんがお世話をしてくれます」)

──具体的に、どのように関わられるのでしょうか。

勇さん:
発達障がいのある子どもへの支援は、かれこれ2005年から行っています。
彼らとの関わりの中で「えぇ!そこ?」というような普通とは違うこだわり、ユニークな着眼、感覚、思考、発想に触れ、私の既成概念の枠を越えさせてくれるようなたくさんの学びがありました。

──2005年当時は、まだまだ発達障がいが知られていなかった時代だったと思いますが、そんな時から支援をされてきたんですね。

勇さん:
そうですね。現在は発達障がいの認知も広がり、発達障がいのある子どもへのアセスメントなどもいろいろと出てきていますよね。

でも私たちが大切にしているのは、「この特性にはこの対応」という知識とスキルのマニュアル化だけでなく、子どもたち一人ひとりが、肩の力を抜いて自然体でいられる環境調整です。作物の成長に例えるなら、種には発芽して成長する力が備わっていて、それには畑の環境が大事で、日光や水が与えられ、それぞれに違う季節を過ごします。人としての成長過程も、これと同じじゃないかなと思います。

(あめんどで仲良くなった二人。「この写真、とても気に入ってます。いいお友達ができましたね」)

──たとえば、どのような調整でしょうか。

睦美さん:
たとえば周囲が気になって集中できないという子の場合、個室に移動したり、パーテーションで視界を遮ってあげたりすると課題に取り組めます。そこに本人が好きなキャラクターの絵を貼ることで気持ちが落ち着くこともあります。。
学習の場合、プリント一枚にたくさん計算式があると、それを見て「無理」と言うけれど、プリントを一問ずつ切り離してカードにし、一枚ずつ渡せばやり遂げることができるといった感じです。

(皆で机に向かって勉強中。「個別学習が多いですが、時にはみんな一緒に勉強することもあります」)

勇さん:
聴覚過敏の子は、市販のイヤーマフ(防音保護具)を装着しています。みんないつの間にかイヤーマフなしで過ごせていますね。

あるきっかけがあって、環境的な配慮が大切だなあと知るようになりました。
活動を始めた当初、送迎中に赤信号で停車する度に大パニックになる13歳の男の子がいました。「ああ、運が悪い!最悪。また赤信号だ!」と、赤信号で停まる度に大声で泣き叫び取り乱すので、運転していた私は憔悴してしまって。

その事を支援員の一人に相談したら、「紙に表を作って、信号を通る度に信号の色を記入してもらう。加えて赤信号で停車する時は、ストップウォッチを渡して何秒止まっていたかを数えて記入してもらうようにしたらいいですよ」と教えてくれて。たった一度のそのアドバイスで、次の日から彼はパニックを起こすことなくなりました。

──そうだったんですね。

勇さん:
空間的な環境調整もあるけれど、精神的、人的な環境をサポートする事も大事だと思います。
その子が間違って信じている情報や価値観を整理してあげる。これは親御さんにも言えることで、お子さんの評価に対して悲観的な思い込みや決めつけがあるなら、その部分と向き合うこともあります。

(お母さんの居場所「ママカフェ」。「子育ての悩みを共有したり、学習会があったり…。お母さんがホッと出来たら、それは子どもにとってもいいことです」)

安心できる環境の中で
自分を知り、他者との関係性を築いていく

(お寿司屋さんの子ども食堂「すしっこクラブ」は”こ食”(孤食・固食・個食・小食・粉食・濃食)を無くす食育型の子ども食堂。「家庭環境に支援が必要な子どもたちのための、隠れ家的な招待制の居場所です」)

睦美さん:
環境調整のためには、本人との関係づくりも非常に大切です。
自分のことが周囲に理解してもらえなかったり否定されたりした経験が続くと、本人はやがて「自分のことはしゃべったらあかん」とか「話さない方がいい」と思い、本当の自分の気持ちや感じ方を出せなくなります。

関係性を築く中で、徐々に「この人やったら話を聞いてもらえる」「否定せんと受け止めてもらえる」と思えるようになると、ぽつぽつと「これほんまは苦手やねん」とか「ほんまはこうしたいねん」と話してくれるようになる。そうなれば支援の方向が見えやすくなる。いかにそういう関係性を作っていくことができるかが大切です。

(「皆で山登りに出かけた時、一人の子が自分で作ったというお弁当の中身は、ご飯とミートボールだけでした。皆でおかずを交換し合って彩り豊かなお弁当に変身したことで、互いの心が温かくなりました」)

──そのような関係性を作るために、関わりの中で意識していることはありますか。

勇さん:
「安心」を土台にしています。
全ての活動は安心の上に成り立ちます。それとほどよい関係というのかな、「あなたが心地良いと感じられる間隔で、私たちとの距離をとってくれていいよ」ということですね。

次に「自信」を持たせること。学校や社会でつまずいたということは、あるひとつのものさしで測られた時に、その部分ができていなかったとか不足だったと否定されたと言えます。傷ついたり自信を失ったりしている子に対して、「思いやりがあるね」とか「力強い字を書くね」とか、別のものさしで再評価するような声かけをするようにしています。

(地域の人たちの力を借りて、さまざまな文化体験教室も開催。写真は琴の教室)

──子どもにとっては、自分のことを否定せず肯定してくれる、安心できるとなると、居心地が良くて、「他にはもう行きたくない」という気持ちにもなりませんか。

勇さん:
良いところを伝えつつ、「こういうところは苦手だよね」ということもあわせて伝えていくようにします。自分の得手・不得手を個性として受け入れて初めて、自分の輪郭が見えてくる。自分とは何であって、何でないのか。そして相手は、自分にとって何であるのか。それを理解することがコミュニケーションの始まりであり、社会性にもつながるのではないでしょうか。

──なるほど。

勇さん:
引きこもりの状態にある若者の中には、ネットで見た世界の相手と自分を比較して、自己認知が正しくできていない子もいます。
自宅にこもっていると、自分と比較する相手がおらず、ユーチューバーや人気漫画家と比較して「なんであんな人たちと自分とはこうも違うのだろう」と落ち込んだり悩んだりするのを見かけることがあります。

自分を客観視するには「手ごろな他者」というのかな。身近な人たちと、ほどよい関係の中で過ごすのがいいと思う。そのために、居場所が大切なんです。

(就労のハードルを少しでも低く。「履歴書不要、面接免除、親しい仲間で就労体験ができる『ちょっとバイト』というプログラムです」)

──確かに。

勇さん:
「困っていることを全部やってあげるよ」「何もやらなくても、ただそこにおってくれたらええよ」という居場所ではなく、そこにいると誰もが成長できる居場所でありたい。「私たちは君たちのことを完全には理解できないけれど、少しでも理解したいし、その努力もしている」「だから君たちも、社会と向き合って他者を理解しようと努めてほしい」ということは伝えるようにしています。

「自分がどう生きていくか」ということに向き合う姿勢や努力は、本人に必要だということですよね。

(駄菓子屋は居場所。駄菓子箱を持って各所へ出かけ、アウトリーチを行う「駄菓子屋パトロール」の様子。「子どもはもちろん、お年寄りも集う居場所です」)

「自分は自分」が見えてくると、周りも見えてくる

(子どもボランティアを育成する「こども未来塾」。「こども未来塾ではよく川(瀬田川)の清掃に出かけます。ゴミはお宝。たくさん拾うぞー!」)

睦美さん:
あめんどのフリースクールに通っていたAさんは、海外から日本に帰ってきた帰国子女でした。
学校のプールの授業で、プールの回数があと1〜2回だったようで、先生が「わざわざスクール水着を新調しなくても、持ってる水着でいいよ」と言ってくれたそうで、持っていた真っ赤な水着で授業に出たそうなんです。

すると周りから、「紺色の水着じゃ無いとあかんのに」と言われて。他にもいろいろとあって、「日本では皆一緒じゃないとあかんのや」と、だんだんしんどくなって学校に行きづらくなったということでした。
でも、私たちのところで過ごす中で「人は人、自分は自分でいいんや」と思えるようになって、「学校に行ってみるわ」と。「あそこに行かなあかんと思ったらしんどいけど、あかんかったらここに帰ってくるし」と言いながら、学校に戻っていきました。

──そうなんですね。

睦美さん:
自閉傾向のあるBくんは、幼い頃は、嬉しいことがあるとガブっと人の手を噛んでしまい、集団生活ではトラブルが絶えませんでした。学校にも挑戦したものの、やはり通うことが難しく、それで私たちのフリースクールに通っていました。

そんなAくんが、小学校5年生になったある時に突如、「運動会に出たい」と。理由を尋ねると、玉入れの道具とか綱引きの綱とか、運動会の時だけ出てくる特別な道具にどうしても触りたいと。小学校の先生方にも相談して、「運動会に出るためには、皆との練習にもちゃんと参加する」とBくんと約束して、それまでのフリースクールでのノウハウを先生方とも共有しながら、彼は練習にも運動会にも参加できたんです。そのまま6年生は、まるでずっと学校に通っていたかのように学校へ通い、無事卒業しました。

卒業文集で彼は、「自分は周りからこんなふうに助けられたから、卒業ができました」と書いていました。そのまま中学へ上がり、登校できて、高校に進学しました。

──まさに自分の輪郭と、他人との距離感を捉えることができてきたんですね。

(老人ホームで演歌や時代劇を披露する「あめんど訪問団」。世代を超えた交流やさまざまな経験の中で、子どもたちは「自分が何であるか」を少しずつ掴み取っていく)

「一人ひとりが本来持っている、オーガニックな力を信じる」

(「体験の風を起こそう」(独立行政法人 国立青少年教育振興機構)運動に連動して企画した自主事業、「デジカメでオリエンテーリング」。「あらかじめ用意した写真と同じものを写してきてね!という内容でした。他にも、田植えや稲刈り、郷土料理や豆腐作りなど、さまざまなリクレーション活動を行いました」)

勇さん:
不登校は、深層にある課題に対して、表層化している「症状」に過ぎません。

一言で不登校といっても、その背景や課題、原因は本当にそれぞれです。それぞれが大きな問題になる前に、子どもたちが自分らしくいられる場所があることで、問題が表層化する前に、予防的な役割を果たせたらという思いもあります。

今はここに通っているけれど、自信が持てるようになったら、子どもたちは「これを試してみたい」とか「何だかやれそうな気がする」と、同じ環境では満足できなくなり、「次に行きたい!」と自然に思うようになります。成長するポテンシャルを、必ず持っているんですよね。

一人ひとりには「成長する力」がある。その力を信じて環境を整える。必要に応じてサポートし、後は自然な成長を願う。何年か後を見据えて、本人はもちろん、ご家族も「実ったな」と思えるような、そんなビジョンを描きたいです。

(瀬田川清掃の後、清々しい気持ちで景色を眺める子どもたち。「困難があるかもしれないけど、良い未来を希望しよう!」)

勇さん:
そのためには、地域の協力も不可欠です。私たちだけで支援を完結させるのは不可能で、途切れない支援のため、より良いものを提供するために、必ず地域のどこにいても子どもとその家族が見守られている、団体間での情報共有や協力体制が必要だと思っています。

睦美さん:
私たちが解決できることは、ほとんどありません。一方的に解決してあげるということも絶対ありません。でも、困りごとを抱えて私たちとつながってくださった方が、言葉にせずとも抱えている思いや背景に寄り添って、常に一緒に考え、最善を尽くしたいという姿勢で課題に挑むこと。
その時に、私たち自身の生活もまた、自分たちのことのためだけに生きるよりも豊かになっていきます。世界が広がり、学ばせてもらうこと、楽しさや面白さ、喜びや感動が、本当にたくさんあります。

(「活動には、地域の連携が欠かせない」と勇さん。「大津市内では、複数の子ども支援団体が集まって情報交換会をしています」)

チャリティーは、子どもたちのための学習や体験活動、食料支援や子ども食堂開催のために活用されます!

(子どもたちと一緒に楽しむ大学生のボランティアさん)

──最後に、チャリティーの使途を教えてください。

勇さん:
チャリティーは、不登校や引きこもりの子どもたちのためのコミュニケーションや学習、体験活動のための資金として、またここで出会った生活困窮家庭への食糧支援、子ども食堂の開催に必要な資金として活用させていただく予定です。ぜひ、アイテムで応援いただけたら嬉しいです。

──貴重なお話をありがとうございました!

(あめんどのすぐ裏の公園にて、スタッフ・元スタッフの皆さんと)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

「活動に子どもたちを合わせるのではなくて、子どもたち一人ひとりに合わせたサポートがしたい」と話してくださったお二人。
お話を一つひとつ伺いながら、出会ってきた子どもたち一人ひとりの声に耳を傾け、ニーズを拾いながら、その都度より良い道を一緒に切り拓いてこられた様子が伝わってきて、「真心」の二文字が浮かびました。
「話を聞いてもらえた」「認めてもらえた」という経験は、小さなようで、子どもにとっては大きな出来事です。一つの場所では短所でも、別の所では長所かもしれない。悪いことだって、見方を変えると良いことかもしれない。学校には馴染めなくても、子どもたちの可能性が途切れることなく広がり社会へとつながっていく、そのような支援の場、また支援の目線が、もっともっと広がっていくといいなと思いました。

・NPO法人あめんど ホームページはこちらから

09design

【2022/10/31~11/6の1週間限定販売】
さまざまな野菜と生き物たちが暮らす「あめんどファーム」。
互いの個性を受け入れ、刺激を受けたり支え合ったりしながら、それぞれが等身大の居場所を見つけ、成長していく様子は、あめんどさんの活動そのものを表現しています。

“You are brave. You are special”、「君は勇敢で、スペシャルな存在だよ」というメッセージを添えました。

チャリティーアイテム一覧はこちら!

・過去のチャリティー一覧はこちらから

logo-pckk                

SNSでシェアするだけで、10円が今週のチャリティー先団体へ届けられます!
Let’s 拡散でチャリティーを盛り上げよう!
(広告宣伝費として支援し、予算に達し次第終了となります。)