CHARITY FOR

生活困窮者が新しい生活を始める際の「連帯保証人」となり、自立のステップを支援する〜認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい

置かれている環境を離れ、新たな生活を始める時。必要になってくるのが「住まい」です。

今週、JAMMINがコラボするのは、「自立生活サポートセンター・もやい(以下「もやい」)。不安定な就労形態や病気など、さまざまな事情で貧困を抱え、ホームレス状態となった人たちが新しい生活を始める時、住まいを借りる際の「連帯保証人」となり、自立を支援する活動を行っているNPO法人です。

2008年末、東京千代田区の日比谷公園につくられた「年越し派遣村」。
ニュースや新聞等で目にし、強い印象を受けた方も多かったのではないでしょうか。この派遣村を主導したのが、当時のもやい事務局長だった湯浅誠さん。この活動により、もやいの名は一気に全国に知れ渡ることになります。
派遣村ではもやいのほか、いくつかの市民団体が失業者を対象に簡易の宿泊所を提供し、炊き出しや職業相談、生活保護申請のための支援を行いました。

あれから数年。日本の貧困問題の状況は大きな改善はなく、2015年の調査では、国民の貧困率は15.6%という結果が出ており(厚労省『2015年国民生活基礎調査』より)、国民の6〜7人に一人が貧困を抱えていることになります。

「貧困が特別なことではなく、当たり前に存在する世の中になってきた。誰もが、何らかの『生きづらさ』を抱えている社会で、セーフティーネットとしての役割ができれば」。そう話すのは、もやい理事長の大西連さん。

貧困の現状について、またもやいの活動について、詳しいお話をお伺いしました。

(お話をお伺いした、もやい理事長の大西さん。)

今週のチャリティー

NPO法人自立生活サポートセンター・もやい

東京を拠点に、広義の意味でのホームレス状態の人・生活困窮者に対して生活の相談や、必要に応じて生活保護への申請同行、人間関係の繋がりの回復を目的とした居場所の運営、貧困問題啓発のためのイベント開催など、貧困問題を社会的に解決することを目指しているNPO法人。

INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO

これまでに3,000世帯の連帯保証人に

──今日はよろしくお願いします。まず、もやいのご活動について教えてください。

大西:
私たちは、広い意味で「ホームレス」状態の人たちがアパートなど賃貸住宅に入る時の連帯保証人になり、彼らの自立を支援する活動を主にしています。

「ホームレス」と聞くと、路上生活者を思い浮かべるかと思いますが、それだけではありません。

住居を持たずネットカフェで寝泊まりする人や、住み込みで働いていた職を失い、住居も同時に失ってしまった人、家庭内暴力から逃れるために住んでいた家を出て居場所を失った人なども、いわば「ホームレス」状態です。

(入居支援事業の一幕。今後の支援方針について、ボランティアの方と一緒に話し合っています。)

大西:
こういった人たちが自立するためには、「住まい」は最低限必要な基盤です。

しかし、孤独でどこにも頼れる人がいなかったり、家族や親族との関係が悪く、連帯保証人を立てることができない人たちのために、私たちが連帯保証人となり、さらに何かあった場合の緊急連絡先となって、住まいを間接的に提供することで、生活困窮者を支援しています。

──連帯保証人になるということは、なかなかリスクがあると思うのですが…。

大西:
リスクがないわけではありません。
しかし、住むところを借りる時、誰も保証人を引き受けてくれる人がいなければ、路頭に迷うことになってしまいます。

実際に私たちが保証人を引き受けることによって、これまで3,000世帯の人たちがアパートに住み、生活を立て直す基盤を持つことができています。

住まいがあるというのは、生活のうえで基本的なこと。
銀行口座を持ったり、携帯電話を持ったり、行政のサービスを受けたりできるのも、住所を持っているからですよね。

住まいがあることで、安定して仕事をし、地域で暮らし、病院に行ける人たちがいます。住まいがあることで、自立のステップを踏み、もっともっと大きなハードルを乗り越えられる人たちがいます。

(もやいが保証人となって、アパートに入居された方。穏やかな生活を取り戻しています。)

困窮の背景に潜む「孤立」。
社会の中に、生活困窮者を支える居場所を

──以前、ホームレスの自立支援を行なっているNPO「ビッグイシュー」さんとコラボさせていただいた時に、「誰も頼れる人がいない」という「つながりの貧困」が、生活の困窮をも生みだしているという話がありました。

「家を借りる際に保証人になってくれる人がいない」というのも、家族や親、友人とのつながりが断たれ、頼れないというケースが多いのでしょうか。

大西:
もし仕事や住むところを失っても、家族や恋人、友人がいて、頼れる人がいれば困窮はしません。給料の手取りが低くても、生きていくことができます。
しかし、やはり貧困問題を考える時、そこには「孤立の問題」が潜んでいると考えます。

たとえば「鬱で仕事を辞めてしまったけれど、関係がわるく実家には帰れない」「シングルマザーで働きながら子育てをしていて大変だが、折り合いがわるく親には頼れない」といったふうに、頼れる人間関係を持たない人たちがいるのも事実です。

(もやいでは複雑化する貧困問題を啓発するため、定期的なセミナーなども開催しています。)

──難しい問題ですね…。

大西:
生活が困窮してしまう理由には、当人が間違った選択をしてしまったということもあるかもしれません。家族との関係もあると思います。

けれど、たとえば同じように派遣の仕事をしていて契約が切れた時に、次の仕事をすぐに見つけられる人もいれば、そうじゃない人もいる。同じリスクを負った時に、うまくいく人がいる一方で、一定数は不器用だったり、生き方がうまくなかったりする人たちがいるのも事実です。

貧困の問題には、自己責任だけでなく社会的責任もあると思っていて、そんな人たちに対して、社会がもう少し寛容であってよいのではないかと思うんですね。

また、例外はありますが、地方出身者や低学歴の人が貧困に陥りやすいという傾向があります。貧困家庭出身の人は貧困に陥りやすく「貧困の連鎖」も指摘されています。

持っている武器が少なく、弱い人が生活に困窮しやすい。
現在の社会の構造上、そうなってしまう仕組みになっているんですね。

日本の社会全体に「生きづらさ」が蔓延している中で、どうしても社会や制度の枠からこぼれてしまう人たちがいる。こういった状況にある人たちをサポートするのが私たちの役目だと思っています。

(もやいに相談にこられた方は、必要に応じて生活保護申請の同行も行っています。(写真はイメージ))

「つながりの貧困」支える活動も

──生活困窮者の保証人になる支援のほかに、どんなご活動をされているのですか?

大西:
もやいでは「入居支援事業」のほか、毎週火曜日には直接困っている人たちの相談にのる「生活相談支援事業」や「交流事業」も実施しています。

先ほども話したように、貧困の背景には、人間関係が途切れてしまっている「つながりの貧困」があります。

アパート入居後の孤立化を防ぎ、人間関係の回復を図るために「交流事業」では、誰でも気軽に立ち寄れる交流サロン「サロン・ド・カフェ こもれび」や、女性の居場所作りの活動「グリーンネックレス」、若者の活動場所「ランタンペアラ こもれび」を定期的に開催し、一緒に食事をしたり、ワークショップを開催したり、イベントを通じた交流の場を設けています。

(もやいが運営する「サロン・ド・カフェ こもれび」の、ある日のランチメニュー。)

(最近では希望者を募り、畑仕事のお手伝にうかがい、一緒に汗を流しています。)

──「生活相談支援事業」では、どのような方が相談に来られるのですか?

大西:
最初にも言ったように「ホームレス」というのは、決して野宿している人たちだけを指すのではありません。今住んでいるところから立ち退きを求められている人、何らかの事情で家を出なければならなくなった人、すでに出てしまった人…いろんなケースがあります。

相談に行くというのは当事者にとってハードルが高く、貯金も何もかもなくなるまで我慢して我慢して、相談に来てくれた時にはもうどうにもならない状況、というような緊急性が高いケースが多いです。

──そういう場合は、どうするのですか?

大西:
相談に乗り、生活保護が受けられる場合は一緒に役所へ行って生活保護を申請します。

公的機関が正常に動けば数日で生活保護が受けられるようになりますが、それまでの臨時的な費用、食費や宿泊費、交通費はもやいで負担することもあります。

どうにもならない状況になって初めて生活保護を頼るのではなく、何か生活保護の一歩手前の段階で、相談に乗ったり、サポートを受けられたりするような制度があればいいなと思いますね。

もやいは、これまでの相談や事例をもとに、政策提言も行っています。

(もやいの事務所にて、生活相談の様子。相談者の方と近い距離で、問題解決に向けてお話をうかがっています。)

チャリティーで、もやいを訪れる相談者に住まいと食事を提供します!

──今回のチャリティーの使途を教えてください。

大西:
住まいを失い、生活に困ってもやいへ相談に来た方たちに提供する一泊分の宿泊費2,000円と食費300円、計2,300円の費用のおよそ1ヶ月分、7万円を集めたいと思います。年末が近づくと、不安定な就労をされている方々が一時的に仕事を失うことも多く、私たちのもとへ多数相談に訪れています。今回いただいたチャリティーで、そのような方々の支援へ特に力を入れられたらとも考えています。

──集まったチャリティーで、自立支援のお手伝いができればうれしいです。

最後に大西さんにお伺いしたいのですが…、普通に日常生活を送っていると、ある日突然住まいを失うだとか、貧困に手も足も出なくなってしまうということがなかなか想像できず、自分ごととしては捉えにくいのですが、私たちとしては、どんなことができるでしょうか。

大西:
もし、ある日突然会社が倒産したり、倒れたりして働けなくなってしまったら、どうするでしょうか?ある日突然、住む場所を失ってしまうとしたら、どうするでしょうか?
相談できる人はいるのか、金銭的な援助を頼める人はいるのか、考えてみてほしいと思います。

頼れる人がいる、という方もいるでしょうし、そうじゃない方もいると思います。
「もしかして相談できる人がいないかもしれない」となった時、不安になると思うんですが、相談できる人がいようといまいと、社会のしくみとして私たちのようなセーフティーネットがあるんだということを覚えておいてほしいと思います。

頼れる人がいるということは強みだけれど、そうじゃなくても、支援は受けることができる。

国民の15.6%の人が貧困である今、何も特別な人たちが困っているのではなく、目に見えないだけで、貧困はすぐそばにある問題です。
そういう意味では、誰もがどこかで関係している問題でもあるし、社会全体として閉塞感があり、誰しもが生きづらい現代を、人とつながって楽に生きられるしくみを作っていきたいと思いますね。

──ありがとうございました!

(毎年開催しているクリスマス会にて。「もやい」に関わってくださっているみんなで乾杯!)

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜山本の編集後記〜

終始冷静に、時にはユーモアも交えながら、淡々とインタビューに答えてくださった大西さん。活動を始められたきっかけについてお伺いすると、学生時代に炊き出しへ手伝いに行ったことがきっかけだったそう。「それまでは関わりのなかったホームレスの人たち一人ひとりに接してみると、親戚のおじさんのような感じだった。ただでさえ大変な生活なのに、差別を受けたり煙たがられているのを見て、弱い立場にいる人たちの状況を改善していかなければならないと感じた」とおっしゃっていました。

何かあった時に、自分を助けてくれる存在を持たない人がいるのだということ。それを知って、自分に置き換えてみて、何ができるかを考えていきませんか。

自立生活サポートセンター・もやい ホームページはこちら

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小舟が「もやい結び」でつながっています。
自立生活支援センター・もやいの名前の由来でもある「もやい結び」と、
「つながってもいられるけれど、時には離れることもできる」という人間のつながりを表現しました。

“Living together”というメッセージには、
「認め合い、一緒に生きていこうよ」という思いが込められています。

Design by DLOP

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【THANKS】NPO法人自立生活サポートセンター・もやいより、御礼とメッセージをいただきました! – 2018/1/27

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