(2017年7月8日、九州北部豪雨にて被害を受けた地域の上空から撮影した被災後の写真(左)。右は、豪雨前の同じ地帯。田畑や道路が濁流により流され、決壊しているのを確認できる。写真はPWJ提供)
2017年7月5日より、九州地方北部に発生した記録的豪雨による被害。道路の損壊や土砂災害が相次ぎ、多くの人が避難生活を余儀なくされ、死者は36名にものぼります。
被災された皆さまに対し、謹んでお見舞い申し上げます。
豪雨が発生した直後から、現地では自衛隊や災害ボランティアによる救助や支援活動が続いています。
7月6日、広島から陸路で現地入りしたNPO法人「ピース・ウィンズ・ジャパン(以下PWJ)」。災害や貧困などの現場を訪れ、支援活動を行うNPOです。
被害の大きかった福岡県朝倉市に入り、1週間にわたり緊急支援活動を続けたPWJスタッフ・西山良太さんにお話しをお伺いしました。
NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)
紛争や災害、貧困などの脅威にさらされている人々に対し、緊急支援・復興支援・開発支援を行うNPO法人。1996年の設立以来、内戦の激しいイラクやスマトラ沖地震の被災地をはじめ、国内外28の国と地域で支援活動を実施。
INTERVIEW & TEXT BY MEGUMI YAMAMOTO
──被害の大きかった福岡県朝倉市で支援活動をされていたとのことですが、今現在の現地の様子を教えてください。
西山:
豪雨が発生して1ヶ月が経ちますが、現在も避難所生活を余儀なくされている人たちがいる状態です。中には家ごと流されてしまった人もいて、避難生活の長期化が予想されます。
(朝倉市の避難所。=7月6日夜)
──現地入りしたときの様子を教えてください。
西山:
以下、活動の経緯をお伝えします。
◼︎7月6日 早朝
災害救助犬2頭とレスキューチーム(8名)の出動を決定。
◼︎7月6日 朝
緊急支援用のヘリコプターでの現地入りを予定していたが、雨がひどく悪天候のため断念。PWJ本部のある広島県神石高原町から陸路で福岡県朝倉市を目指す
◼︎7月6日 昼過ぎ
現地到着。
対策本部にて情報収集を開始したが、被害の実態がまだ分かっておらず、捜索活動や人命救助の要請はなく、被害の大きかった「杷木(はき)地区」の避難所・杷木中学校にて避難者たちに必要な物資の聞き取りを開始。
行政が素早く対応したこともあって食料品は足りていたが「着の身着のまま逃げてきたので着替えがない」、「ウェットティッシュや歯ブラシなどの衛生用品が足りてない」といった声が聞かれた。
(杷木中学校の避難者に支援物資のニーズ調査をするPWJスタッフ(左)。=7月6日夜)
◼︎7月7日
朝倉市杷木地区松末にて、豪雨により道路が寸断され、30名以上が孤立した状態であるとの情報が入る。PWJとアジアパシフィックアライアンス・ジャパン合同チームは、災害救助犬の「夢之丞」と「ハルク」と共に現地へ向かう。
車で走れるところまで行き、そこからは土砂やがれきだらけだったため、水陸両用車などを使って突き進んだ。
(濁流で壊れた民家の残骸が残る松末地区。濁流に飲まれひっくり返った車、えぐられた家屋、大量の倒木…。豪雨の残した爪痕はあまりに大きい。=7月7日)
(被害が大きい杷木地区で捜索活動にあたるレスキュー隊員たち。=7月8日)
天候は相変わらず悪く、増水した川が行く手を阻み、目的地へと辿りつけない。さらにその先にも氾濫した川があったため、先に現地入りしていた自衛隊や消防らとも話し合った結果、水難救助の装備がないと救助は危険だと判断し、陸からの捜索を断念。その後、ヘリコプターで現地上空付近を飛行し、情報を集める。
(捜索活動にあたる災害救助犬の「夢之丞」と「ハルク」。=7月6日)
◼︎7月8日
前日、川の氾濫によって捜索を断念せざるをえなかった朝倉市杷木地区松末。朝からヘリコプターで現地へ向かい、災害救助犬「ハルク」と共に捜索活動を開始。
また、企業から提供を受けたマットレス100枚、肌着1,800枚を配布。体育館の運動用マットで寝ていた避難者たちの顔に、安堵と笑みが浮かんだ。
ずぶ濡れになった衣服をずっと着用していた避難者からは「ありがたい」という声が聞かれた。
また、ブルーシート91セット、靴下1,203足を配布しながら、引き続き必要物資の聞き取り調査を行う。
(福岡県朝倉市内の避難所(フレアス甘木)に肌着を届けるPWJスタッフ。=7月7日)
(杷木中学校にマットレスを運び込む様子。=7月8日)
◼︎7月9日
午前、パートナー団体より、「福岡県東峰村で断水が続いているため、ウェットティッシュや消毒液が大量に欲しい」との連絡。朝倉市の東に位置する東峰村は山地が大半を占め、土砂崩れが多発。400人の村民が避難しており、その大半が高齢者だという。
村内に9箇所ある避難所では、断水により衛生環境が悪く、彼らが感染症にかかる危険性が高まっているという。この状況を「急務」と判断し、支援のための活動を開始。佐賀県鳥栖市のドラッグストアにてウェットティッシュや消毒液、ペーパータオルや石鹸を10万円分ほど購入し、避難所に届けた。
「暑さなどが原因で食中毒や胃腸炎を起こしやすい時期。仕出しのおにぎりも手で作っているので、とても助かった」と村役場の担当者は安堵の表情を見せてくれた。
(杷木中学校にて、マットレスを受け取り安堵の表情を浮かべる子どもたち。=7月8日)
◼︎7月10日
東峰村にて肌着を配布。
◼︎7月11日
災害救助犬と共にヘリコプターで孤立している集落へ。8日に朝倉市杷木地区を捜索した際、災害救助犬のハルクが生存反応を示したがれきの周辺を中心に、行方不明者の捜索を行う。
(ヘリコプターで被災現場に降り立つレスキューチーム。=7月8日)
◼︎7月12日
福岡県東峰村の避難所のひとつで、約100人が避難生活を続けている「保険福祉センターいずみ館」。10日以降弁当が提供されているが、朝と昼は避難者たちが避難所全員分の食事を作っていると聞き、負担を少しでも軽減したいと、アジアパシフィックアライアンス・ジャパンや「佐賀から元気を送ろうキャンペーン」と協力し、弁当170食分を届ける。
100食分を避難者に、70食を付近住民に配布。避難者たちに笑顔が見られた。
(避難所に届けた弁当。=7月12日)
◼︎7月13日
午前、約200人が避難する朝倉市内の「サンライズ杷木」を視察。
避難者たちが細いロープで洗濯物を干していたこと、女性の授乳スペースが周囲から丸見えだったことから、避難生活の長期化も視野に入れ、洗濯物を干すためのスタンド6基と、乳幼児を連れた女性のための授乳スペースを設置。
また、別の避難所では保冷剤を267個配布。
(授乳スペースを作るPWJのスタッフ。=7月13日)
(洗濯物干しを作るPWJスタッフ。=7月13日)
西山:
現在は、住んでいた集落や自宅が流された被災者の避難生活の長期化が予想されるため、避難所の運営支援を続けています。
──PWJが災害支援をするときに大切にしていることは何ですか?
西山:
「救助を必要としている人のためにいち早く」、「支援物資を求めている一人でも多くの人に」支援ができるように心がけています。
これまでの経験を最大限に生かし、被災者たちのニーズに最大限応えていきたいと考えています。
──緊迫した現地の様子が伝わってきますが、こういった活動の資金は、どうされているのですか?
西山:
今回の福岡での支援活動の資金はすべて皆さまからのご寄付やジャパン・プラットフォーム(※1)からの助成金によって成り立っています。
※1)「ジャパン・プラットフォーム」…NGO・経済界・政府が対等なパートナーシップのもとに連携し、単独ですばやく包括的に支援する財政基盤等が十分にない日本の加盟NGOを、さまざまな形でサポートする中間支援団体。(出展:ジャパン・プラットフォーム ホームページ「JPFのしくみ」より)
西山:
今回のコラボで、被災地の避難所運営のための資金を集めたいと思っています。ぜひ、ご協力ください。
──ありがとうございました。被災地の人たちのために、ぜひチャリティーにご協力ください。
インタビューを終えて〜山本の編集後記〜
ある日突然、当たり前だった日常がなくなってしまう。当たり前だった景色が消えてしまう。
…自然災害は、予測できません。容赦なく、そして突然やってきます。
逆にいえば、私たちは誰しも、自然災害に遭う可能性があります。
7月九州北部豪雨で被害に遭われた方たちに、力を届けませんか。
“Helping each other in the tough times”、「大変な時は、お互いに助け合おう」。
「困った時はお互い様だよ」というメッセージをタイポグラフィーで表現し、男女共にカジュアルに着やすいデザインに仕上げました。
Design by DLOP