CHARITY FOR

NPO法人 自殺対策支援センター ライフリンク

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(TEXT BY KEIGO TAKAHASHI)

僕には自殺で亡くなった親族が2人います。1人は大昔に亡くなった為、直接の面識はありません。もう1人は、直接何度も会ったことがありました。

当時は20年以上も前。中学生だった僕には真実について何も知らされず、親族の中でも事実を知っていたのはごく一部だけ。いわゆる親族内の「タブー」です。それほど、自殺とは忌避されるものとして扱われていました。

その後、自殺だったとは、成人後に教えてもらったのですが、今も本人に対して聞いてみたいことがあります。

「自殺するほど、辛いことって何だった?」−、

この問いが、本人に届くことは決してなく、残された親族たちは想像するしか無いのが現実です。

死なない支援よりも、生きるための支援を行うNPO

今週のチャリティーはNPO法人 自殺対策支援センター ライフリンク。ライフリンクの活動は、自殺対策の全般に及びます。

活動の一つ目は、自殺対策の基盤作り。2006年にはひと月半で10万人以上の署名を集めるなど、自殺対策を国や自治体の責務と明記した「自殺対策基本法」の成立に尽力してきました。

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自殺対策の法制化を求めた「3万人署名」の様子

さらには、自殺に関する実態解明にも取り組まれています。専門家とともに523名の遺族に聞き取り調査を行った内容を分析した「自殺実態白書」の発行などが代表的なもの。

こうした調査活動で初めて明らかになったことが、少なくありません。

「自殺の多くは単一の要因ではなく、仕事の配置転換→過労→職場の人間関係の悪化→うつ状態といったように、複合的な要因が連鎖した末に起きている」などは、ライフリンクらの調査によって社会に認識が広まった事実です。

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「自殺実態白書2008」発表時の記者会見

その他にも、自殺の実態に基づきどのように対策をしていけばいいか、というモデル作り、行政の監視、社会への啓発などを行っています。

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自殺対策の官民合同のシンポジウムの様子

日本では、自殺をタブー視しがちです(私の親族も近いです)。臭いものに蓋をするというか、見たくないものは放っておけというか。

この辺りの背景について、NPO法人ライフリンクの代表 清水康之(しみず やすゆき)さんはこう教えてくれました。

現代の日本では日常の中に死を感じる機会が少なくなってきていています。そして、死をコントロールしようとすると、自殺は突然の死であり、そのものを否定することになります。
自殺は死の中でも忌み嫌われがちで、周囲からしても「何か不気味なもの」としてしか見えない。そうした背景から今まで調査できるとは思われていなかったし、実際にこれほど大規模な調査が行われることはありませんでした

実態の把握や対策が遅れがちだった、自殺対策の分野。清水さんらの尽力によって、自殺対策を取り巻く環境はここ10年で大きく変化してきたとも話します。

自殺対策基本法の成立で180度、自殺を取り巻く環境が変わりました。メディアで自殺を社会問題として捉えた報道が出始め、行政は仕事として自殺対策に取り組むようになった

自殺の多くは追い込まれた末の死であり、人の命を守るために社会全体で自殺対策を進めようといった方向に、多くの人の意識が向くようになりました

韓国と日本の自死遺児の交流を生み出したいー、創設者の想いとは

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ライフリンク代表の清水さん

ライフリンク代表の清水さんは元NHKのディレクター。自死遺児の取材を通じて「不条理な目にあっている人」の存在に気がつきます。

自殺は正直者が馬鹿を見る、ということの究極の形だと思います。もう生きられない、死ぬしかないという状況に追い込まれて多くの人は亡くなっているわけですが、それを個人の問題と社会は切り捨ててきた。多くの遺族も誤解や偏見に晒されて苦しんできた。

こうした世の中や社会の中で、私自身が生きていたくないと感じたんです。今だけでなく、将来も同じ。このままではダメだ、と。ちょっとでも自分が暮らす社会を生き心地のよいものにしたい、そんな想いからこの活動をスタートさせました

様々な努力の結果、日本の自殺対策を変えてきたライフリンク。そんなライフリンクのスタッフの中に韓国からの留学生がいて、韓国の自殺について聞いていくうちに「日本の10年前のよう」と感じるようになったと言います。

韓国では自殺に対する偏見、差別が今も根強く、家族が自殺したと知られれば周囲から奇異な目で見られることが多いようです。

そもそも、日本だろうが韓国だろうが、家族が自殺で亡くなったことにより、遺族が抱える悲しみは同じです。

1人が自殺したことによって、平均4〜5人が自死遺族になると推計されており、日本では毎年約10万人、韓国では毎年約6万人が自死遺族となります。今も多くの自死遺族が大切な人を自殺で亡くしたことの苦しみと悲しみを背負って生きることを余儀なくされています

遺された人にとって、その人らしい人生を生きるための何かをつかむ、感じる機会を作ることができればと思って、韓国と日本の自死遺児の交流会開催を企画しています。

遺児の心のサポートだけではなく、将来的には自殺対策における架け橋となって欲しいとの願いもあります。今週、皆さんからお預かりするチャリティーは、そうした遺児の交流会にも、大切に使わせていただきます

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当日参加予定の韓国の自死遺児

最後に

ライフリンクの活動や、清水さんのお話のポイントを改めてまとめると、1つ目が、自殺の多くは本人のせいでは決してない、ということ。「社会的脅迫」により、本人は生きるという選択ができなかったに過ぎません。

もう1つは、法の成立を機会に、自殺をタブー視していた状況が大きく変わりつつある、ということ。タブー視することが減れば、その背景について多くの人が知り、生きるための支援について考え始めることができます。

今週のチャリティーを通じて、皆さんの自殺に対する考えが少しでもアップデートできたなら、これ以上のことはありません。

最後に、ライフリンク代表の清水さんからのメッセージを紹介します。

誰にでもできる自殺対策とは「私たち一人ひとりが、一日一日を大切に過ごすこと」ではないかと思います。
私たちは誰もがいつか死を迎えるのであって、つまりどれだけ自分が大切に思っている人がいたとしても、あるいはどれだけ自分を大切に思ってくれている人がいたとしても、その人との永遠の別れは避けることができません

その意味で、私たちは誰もが「余命」を生きているのだと思います。そうしたことを時々思い返すだけで、他者に対して少し謙虚に、少しやさしくなれる、みんなでやさしい社会を作っていけるのではないかと思います

チャリティー・アイテムのデザインにあるように、ランプのような、やさしく、ほんのりあたたかい光を、互いに発して、互いに感じながら、生きることのできる社会を共に作っていけたらと思います。応援をよろしくお願いいたします

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