突然ですが、筆者が昔から疑問だったことがあります。
それは、なぜ人はすぐ忘れてしまうのか─、ということ。
調べてみると、こんな実験結果を見つけました。
記憶したことを1時間後には50%、1日後には25%しか覚えていない─、という実験結果があるそう。
そもそも、私たち人間は「忘れる動物」だと考えたほうが良いいのかもしれない─、
しかし、私たちには「忘れるべきでないこと」が、確実に存在しています。
この記事を通じて、忘れないために、今一度思い出して頂きたい─、
今週のチャリティーはそんな想いから実施します。
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死者8,800名以上、倒壊家屋60万棟─、
1年前の2015年4月25日、ネパールを大きな地震が襲いました。
2016年4月25日で発生からちょうど1年経とうとする今、ネパールで新しい活動を展開しようとするのが、今週のチャリティー、NPO法人チャイルド・ファンド・ジャパン。
今、ネパールはどんな状態なのか、そしてどんな人が支援に携わっているのか、詳しいお話をチャイルド・ファンド・ジャパンの小保方 珠実(おぼかた たまみ)さんに伺ってきました。
(写真右 広報担当のチャイルド・ファンド・ジャパン 小保方さん)
「私、小保方は2007年からチャイルド・ファンド・ジャパンで働いています。
もともと、学生時代にフィリピンへのスタディ・ツアーに参加したことが、国際協力に興味を持ったきっかけでした。
フィリピンの厳しい状況をテレビで見たことはありましたが、首都マニラに今も存在するスラム街「スモーキー・マウンテン」に行ってみると、そのあまりの臭いに、大きな衝撃を受けました。
それが原体験と言っても良いかもしれません。
大学卒業後は企業に就職し、営利のために働くという経験も積みながら、お給料の一部をいくつかの団体へ寄付していました。
(寄付を通して協力していたNGOの活動地域を訪れることも)
そのうち、自分の時間や能力を社会のために使ってみたい─、社会的な課題を解決する現場の近くで働き、その変化を自分の目で見てみたい─、と考えるようになり、チャイルド・ファンド・ジャパンで働くようになりました」
最近、増えているのが、小保方さんのように企業で経験を積んだ方がNGO/NPO業界への転職。給与など、転職に対する不安はなかったのでしょうか。
「正直、心配が無かったわけではありません。給与が減ることは想定していましたので、生活をどんどんシンプルにしていきました。でも目標があったので、辛くはなかったです。
毎日の仕事は、責任もあるため、必死ですが、充実感はあります。
私の仕事は、チャイルド・ファンド・ジャパンの活動を多くの方にお伝えし、共感していただき、ご支援いただくこと。子どもたちを取り巻く厳しい現状を「伝える」にはどうしたら良いか、常に考えています。
また、チャイルド・ファンド・ジャパンは教育を中心に支援しているので、その成果がすぐに出る訳ではありません。
子どもたちが学校へ行き、卒業して、社会にでて自立できるようになる─、そうした長期的な視点をもって活動しています」
死者8,000名を超える大きな被害が出たネパール、現地では多くの支援が届いていたことが想定されます。混乱などは起きなかったのでしょうか。
「私たち、チャイルド・ファンド・ジャパンは1995年からネパールで活動をしていました。
一対一でひとりの子どもとつながり、成長を支え、見守ることができる『スポンサーシップ・プログラム』を2010年から開始するなど、これまで現地のパートナーNGOと一緒に支援を続けてきました。
実際、昨年4月に地震が起きた時も、現地のパートナーNGOとともに、震源地域に近い活動地域であるシンドゥパルチョーク郡で、約3,200世帯に食料を配布しました。
(食料配布の様子)
私たちの事務所がネパールの首都カトマンズにあり、この時はまずカトマンズで食料を購入し、支援地域へ持って行きました。
当初、混乱を想定しましたが、実際はパートナーNGOが準備した配布リストを元に、落ち着いて配布することが出来ました」
緊急支援が一段落し、状況は次のフェーズへ移っていきます。この時、教育支援を中心として活動するチャイルド・ファンド・ジャパンは、どう考え、どんな行動を起こしたのでしょうか。
「緊急支援が必要な状態が一段落すると、子どもたちのために何をすべきか、と考えました。
この頃、まだ学校再開の見込みが立っていなかったので、子どもたちが集まり、楽しく過ごせ、こころと体の健康を支える場所を作ろうということになりました。
私たちは、この場所を「チャイルド・センタード・スペース」と呼んでいるのですが、ここでは、地震によってこころに傷を負ったこどもたちへのケアにつながる遊びや活動が行われました。
具体的には、歌を歌ったり、絵を描いたり、ゲームやスポーツを行いました。
(音楽に合わせてダンスを踊る子どもたち)
震災による倒壊や壁の崩落などにより多くの学校の再開が遅れたため、子どもたちは学校へ通うことができず、ずっと家にいました。
それを機に働きにでるなど、子どもたちが学校から離れて行ってしまうことを、私たちは心配しました。
また、心理的に不安な状況が続いていたため、両親のもとからなかなか離れられなかった子どもたちに、外に出る機会をつくった、という理由もあります。
実際、『チャイルド・センタード・スペースに来ていた子どもたちは、仮設教室での授業の再開時、スムーズに授業に戻ることができた』という報告もありました。
子どもたちというナイーブな存在だからこそ、入念なステップを踏みながら、少しずつ、そして長い視点での支援が必要なんです」
今週で大地震の発生から1年が経つネパール。今、どのようなことが起きているのでしょうか。
「現在、子どもたちは仮設教室で勉強しています。
(仮設教室で勉強している子どもたち)
楽しく、一生懸命勉強しているように見えますが、先生からは『子どもたちの集中力が下がっている』と聞いています。
仮設のため、隣のクラスの音が筒抜けになったり、暑かったり、寒かったりすることが背景にあります。
ネパールは、1年生から10年生まで学校へ通い、10年生を終えると修了試験(日本での高卒と同等の位置づけ)があります。
この修了試験の合格は、公務員の採用試験の際に必要とされるなど、子どもたちにとって、将来を左右するものになります。
この試験の合格率、2014年度の全国平均が43.92%に対し、チャイルド・ファンド・ジャパンの支援を受けた子どもたちは58%と高く、私たちの活動はこの水準をさらに向上させていくことを目標に活動しています」
チャイルド・ファンド・ジャパンの活動、小保方さんの想い、いかがだったでしょうか?
様々な災害支援をしているNGO/NPOの担当者が口を揃えて言うのが、
「発生当初は沢山寄付が集まるが、どんどんチャリティーが減っていく」
「本格的な復興はこれから。継続的な支援をお願いしたい」
国内外の現場では、同じようなことが起きています。
例えば、私たちJAMMINが発生から5年経過している東日本大震災について、毎月チャリティー・キャンペーンを実施しているのは、「長く見つめ続けて欲しい」から。
私たちのように、災害支援のプロではない人間は、1年よりもっと長く見つめ続けることで応援したい─、そんな想いを新たにしました。
チャイルド・ファンド・ジャパンの小保方さんより、メッセージをお預かりしています。
「ネパール大震災に限らず、自然災害がメディアで報道され、世界からの注目が集まるのは、発生したあとの短い期間だけです。支援活動においても、緊急支援だけが注目される風潮があります。
しかし、今回のような大災害から復興するには、どんな国でも長い時間がかかります。ましてネパールのような経済的に貧しい国においては、長期的・継続的な支援が必要です。
今週のチャリティーは、大地震から1年を迎えたネパールの子どもたちのために大切に使わせて頂きます。
私たちの活動をモチーフにしたチャリティーアイテムが、頑張っているネパールの子どもたちと同じように、皆さんの頑張る気持ちの後押しになれば、嬉しいです。
ネパールの子どもたちへ想いを馳せて頂き、今後の応援もよろしくお願いします」
TEXT BY KEIGO TAKAHASHI
(先生の話に一生懸命耳を傾ける子どもたち)
【 THANKS MESSAGE 】NPO法人チャイルド・ファンド・ジャパン から御礼とメッセージ | JAMMIN(ジャミン)
法人名:NPO法人チャイルド・ファンド・ジャパン
活 動:東京に事務所を構え、子どもたちの成長と地域の自立を目指して1975年から活動を続けている非営利法人。
住 所:東京都杉並区善福寺2丁目17-5
H P:https://www.childfund.or.jp