「ダウン症」という名前を知っている方は多いと思います。では、ダウン症に関する次のことは知っていますか?
今週、JAMMINでは、3つの理由からダウン症をテーマにすることにしました。
1つ目は、多くの人がダウン症のことを知っているようで、意外と知らないのではないか、ということ。今週のチャリティーを通じて、まずはダウン症そのものに対する理解が進んで欲しいと考えています。
2つ目は、日本で平成28年4月1日より「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)が施行される背景があるということ。今より更に障害というものを意識し、対応を求められる社会がすぐそこまで来ています。
3つ目は、今だにダウン症に限らず障害を巡る悲しいニュース(暴力など)が後を絶たないということ。最近では、無理心中をはかったような事案があるなど、障害に対して「社会の壁」があるような気がしてならないと感じています。
高知新聞:高知のニュース:社会:高知県吾川郡で母と障害児の小4の娘が死亡 無理心中の疑いも
今週のチャリティーは、公益財団法人 日本ダウン症協会(JDS)。団体の活動について、詳しい話を伺ってきました。
私たち日本ダウン症協会は、ダウン症のある人への社会の理解を深め、ダウン症のある人やその家族の生活の質を高めるため、多くの人に情報を届けたいと活動しています。
ダウン症(正式名称はダウン症候群)は、人が持つ染色体の21番目が3本ある、という先天的な遺伝子の突然変異によって起こります。
それにより、知的発達の遅れや筋緊張の低下等が起こります。また、心臓や消化管に合併症を引き起こす場合もあります。遺伝ではないことも知っていただきたい。
しかしながら、私たちはいくつかの合併症を持つ「ダウン症のある人」という言い方とします。そういった意味でダウン症を一つの特徴ととらえています。
私たちの活動には、ダウン症に関する「電話相談事業」があります。
ダウン症のお子さんを育てたお母さんが研修を受け、相談員として相談に乗っています。各都道府県にいる相談員が、ダウン症のあるお子さんを授かった方や、施設職員などダウン症のある人たちをサポートする立場の方々とお話しています。
先ほども申し上げたとおり、ほとんどのダウン症は染色体の突然変異によって起こります。ここには遺伝的な影響は少ないのですが、ご出産されたばかりのお母様からは「義父母から『うちの血筋にはダウン症はいない』と言われた」「妊娠中のこういう行動がいけなかったのか?」などという悩みを聞くこともあります。
また、「身近な人に、どうやってダウン症のことを伝えたらいいのか?」や「どう教育をしていけばいいのか?」「自身の仕事は続けられるのか?」といった相談も頂きます。私たちの電話相談員は、全員がダウン症のある人の親であり、ご相談頂く方の気持ちをくみ取りながら、丁寧に相談に乗っています。
電話相談では、時に泣きながらお電話を頂くことがあります。ご自身に起きていることが受け入れられないご様子で、最初は感情的になっていることもあるのですが、相談員が丁寧に対応し、最後は笑っているような声でお話されているのを聞くと、続けていてよかったなと感じます。
2つ目はダウン症について正しい理解を進めるための普及啓発活動。
10年間にわたりダウン症に関わって下さっている方に対して、ダウン症の理解を深める為のセミナーを開催しています。延べ3000人以上の方が受講してくださっています。
また、ダウン症のあるお子さんを授かった方に向け、JDSの相談窓口をお知らせするチラシや、医療関係者に対しダウン症のある方への理解を深めてもらうための冊子、ダウン症のあるお子さんを授かったご両親向けの子育て手帳(試作版)などを作成・配布しています。
2012年より国連で3月21日が「世界ダウン症の日」と制定されたのを受け、毎年記念イベントを開催しています。
講演や、ダウン症のある人たちによるセルフ・アドボカシー(本人アピール)、さまざまなパフォーマンスなど、楽しく有意義な1日になっています。
また、JDSでは3月を「ダウン症啓発月間」と定め、4年間にわたり毎年約1万枚の啓発ポスター(ダウン症のある人の活き活きした姿がモデル)を配布しています。
JDSの理事のほとんどがダウン症のある人の親で、無償で活動しています。また、行政からの補助金もほとんどいただくことなく、会費と、個人や企業からの寄付を原資に活動をしています。
JDSの活動の目的の1つとして、「ダウン症のある人やその家族の生活の質を高める」ということを挙げました。
ダウン症は合併症などのために20歳まで生きられない、といわれた時代がありました。この点については、最近では医療技術が進み、大きく改善されています。
人生が長くなると「どう過ごすのか」ということが重要になってきます。ダウン症のある人が、好きな趣味を楽しみ、好きな友達と一緒に勉強し、好きな仕事に就くことが出来るのか等、より豊かな人生を過ごしたいとの思いは当然強くなります。
また、最近では親御さんが亡くなられた後に、子どもが自立した暮らしを送れるのか不安をもたれる方もいらっしゃいます。グループホームでの共同生活などの取り組みが進んでいる段階です。
そして「社会の認識」について。
障害のあるなしに関わらず、誰でも出来ないことって、もちろんありますよね。ダウン症だから出来ない、としてその人の持つ可能性を閉じ込めてしまうことがあります。
今ではダウン症がある人が他の方と変わりなく、高校野球の選手になったり、書家やダンスのインストラクターになったりするケースが出てきています。タレント・俳優やモデルなど、さまざまな可能性にチャレンジする人が増えています。
こうした背景の中で、私たちは、もともとの母体が「ダウン症のある人の親の会」であり、長い活動の歴史を持っています。
ダウン症があっても、自分らしく過ごせることを、自分たちで体現し発信していけることが、私たちならではの活動になっていると考えています。
ダウン症のある人への社会の理解を深め、ダウン症がある人もない人も、誰もがその人らしく、安心して暮らしていけるインクルーシブな(包み込む)社会を実現出来るよう、これからも活動を続けていきます。
今年の4月から「障害者差別解消法」が施行され、障害者に対する社会的障壁を取り除くための「合理的配慮」が社会に求められるようになります。
合理的配慮と言うと大げさですが、身近な問題として、ダウン症がある人とどう接すればいいのか、というご質問を頂くことがあります。
一言で言うのは困難ですが、知的に障害がある場合、ゆっくり行動する方や話をするのが苦手な方が多いので、根気よく向き合って欲しいです。本人の意思を配慮せず、よかれと思って色々決めてしまうと、齟齬(そご)が生まれます。周りの人は本人の「こうしたい」に心を傾け、読み取っていただきたいと思います。
先ほども申し上げましたが、私達は3月21日の世界ダウン症の日を記念して毎年イベントを開催しています。
今年のテーマは「マイ フレンド・マイ コミュニティ」。インクルーシブな社会を実現するうえで最も重要な、友達やコミュニティとのつながり、がテーマです。興味を持って頂いた方は、是非足を運んで頂けると、私たちの伝えたいことを知って頂けると思います。
welcome to our site | World Down Syndrome Day
最後に、皆さんからお預かりするチャリティーは、普及啓発のためのポスターや冊子の作成のためにご寄付を使わせて頂きます。
チャリティー・アイテムのデザインでは、23個の「葉っぱのペア」のうち、1つだけ3つある様子を描いて頂いています。ダウン症のほとんどが、21番目の染色体が3つあることに由来しているのを表現しています。
「このデザイン何?」と聞かれる機会がありましたら、ダウン症のこと、私たちの活動のことをご紹介頂き、日々のファッションを楽しんで頂ければ嬉しいです。
チャリティー・アイテムを通じて、ダウン症のある人が暮らしやすい社会に近づけるよう、応援よろしくお願いします。
TEXT BY KEIGO TAKAHASHI
【 THANKS MESSAGE 】公益財団法人 日本ダウン症協会 から御礼とメッセージ | JAMMIN(ジャミン)
法人名:公益財団法人日本ダウン症協会
活 動:東京に事務所を構え、ダウン症のある人たちとその家族、支援者など全国約5,700名の会員を抱える非営利法人。
住 所:東京都豊島区南大塚3-43-11
H P:http://www.jdss.or.jp