CHARITY FOR

意図しない妊娠・中絶を無くし、人生をデザインするために「性」を正しく知って欲しい〜NPO法人ピルコン

皆さん、成長の過程で「性」について、どこでどんな風に学びましたか?

自分の学生時代を振り返ってみるのですが、そういえばきちんと「性」について大人から話を聞いたり教わったりしたことって、なかったように思うんです。

ある調査によると、中絶経験のある女性は約8人に1人という調査結果が出ています(『第7回男女の生活と意識に関する調査』(2014年)より)。

「性」に関する正しい知識の不足や、「まさか自分は妊娠しない/させないだろう」という当事者意識の不足が、予期しない妊娠や中絶の原因の一つとして挙げられるのではないでしょうか。

今回のチャリティー先は、NPO法人ピルコン。
理事長の染矢さんは、二十歳の頃に経験した予期せぬ妊娠・中絶を通じて、「性」を正しく知ることの大切さを訴えます。

「性を正しく学ぶことが自分やパートナーを守り、自分の人生を思った通りにデザインすることにつながる」、そう話す染矢さんに、活動について詳しいお話をお伺いしました。

今週のチャリティー

NPO法人ピルコン

東京を拠点に、「自分らしい人生と豊かな人間関係を築ける社会」の実現を目指して、若者を対象に意図しない妊娠や性感染症の予防啓発と性に関する正しい知識の普及活動を行っています。

▲NPO法人ピルコン代表の染谷明日香さん。

「意図せぬ妊娠で、自分と同じようにつらい思いをする人を減らしたい」

——活動を始めたきっかけを教えてください。

私自身が、大学在学中の20歳の頃に意図せず妊娠し、中絶を経験しました。

中絶という選択をしたんですが、その経験が本当に辛くて。
「日本の中絶の件数ってどれだけなんだろう?」って調べてみたところ、当時は年間30万ぐらいありました。

すごく多い数なのに、これまで生きてきて、性に関する正しい知識について知る機会が全然なかったなあと思ったんですね。

周りの友達に聞いてみても、学校の勉強は一生懸命やっても、「性」に関する正しい知識を学んだという人が少なく、「彼氏が避妊をしてくれないから不安だ」と悩んでいたりする友人も多くて。

自分のようなつらい思いをする人を減らすために、学生たちに「性」について正しく伝えたり、「性」について考えたりする場があったらいいなと思って、学生団体を立ち上げてイベント等の活動するようになったのがきっかけです。

▲若者を対象に、性について学ぶイベントを開催。タレントの鈴木奈々さんがゲスト出演してくださいました。

——「性」となると、なかなかおおっぴろげに話せないというか、タブーだったり触れづらい部分があったりするテーマだと思うのですが、活動当初から、ご自身の妊娠・中絶の経験は公にされていたのですか?

学生の頃は、伏せていました。

卒業後、社会人として働いていたんですが、自分が社会に対してできることってなんだろう?、やりたいことってなんだろう?と考えるようになって、ピルコンの活動を再開しました。

活動を再開したときに、活動のきっかけとして自分の体験を話したら、周囲の人たちが真剣に耳を傾けてくれることがわかって、それ以降は公にしています。

自分の経験を発信することで、同じような経験をした人たちに勇気を伝えたいという思いもあります。

10代の中絶件数は年間2万件。望まない妊娠には社会的リスクもつきまとう

——「中絶経験のある女性は8人に1人」というのには驚きました。やむをえない事情はあるにせよ、「産むか産まないか」苦渋の選択を迫られ、傷つく女性がいると思うとつらいですね。

最新のデータでは、年間約18万件に及ぶ中絶が行われ、そのうち10代の中絶件数は全体の10%にあたる年間約1万6千件というデータがあります。

また、「望まない妊娠・出産」には、ひとり親家庭や貧困、虐待など様々な社会的リスクが連鎖する可能性があります。

まずは「性」に関する正しい知識を持つこと。
そうすることで、自分が望む人生をデザインしていく可能性が広がると思います。

深刻なのは望まない妊娠だけでありません。

無防備な性交により、性経験のある女子高生の約8人に1人は性感染症に感染しているというデータもあります。
このような他人事ではない事実も若い人たちは知る機会がなかなかありません。

▲ピルコンのミーティング風景。自分たちも学びながら、啓発活動を推進しています。

「性の情報はネットから」がほとんど。「性」についてきちんと知る場が必要

——性感染症に関しては、知識として知らないと症状が自覚できなかったり、自覚症状があっても恥ずかしくて周囲の大人たちに相談できず放置してしまうといったケースもありそうですね。

こういった課題の背景を考えると、やはり正しい知識をきちんと得られていないというのは大きいですね…。

誰にも相談できず、インターネットの質問サイトに頼ったり、誤った情報を信じてしまったりということもあります。

現在私たちは杉並区や他のNPO法人と協働で、性感染症予防の普及啓発を目指す「すぎなみレッドリボンプロジェクト」に取り組んでいます。

ここで行った若者へのアンケート調査結果(回答者数230名)によると、「性の健康(性感染症や妊娠等)についての情報をどのようなところから得ていますか?」という質問に対して、「インターネット」と答えた人が198人(86%)でした。

また、「性の健康(妊娠、性感染症など)に関することで困った時、だれに相談をしますか?」という質問に対して、「インターネット」と答えた人は160人(70%)。

いずれも高い確率で「インターネットから性に関する情報を仕入れる/相談する」という結果になっています。

——本当か嘘かわからないような情報も溢れかえっているなかで、若い子たちは、特に情報の正誤や善悪の判断をつけることも難しいですよね。

そうなんです。

あやふやな性知識のために悩んだり傷ついたり、誰にも相談できずに悩んでいる若者を減らすために、ピルコンは主に中高生を対象に、学校や児童養護施設などで「性」と「健康」について正しく伝える性教育プログラムを実施しています。

生徒たちに「エロ」でも「他人事」でもなく「身近なこと」として「性」を捉えてもらう「性教育プログラム」

——なかなか、私自身しっかり「性」について話を聞いた経験というのがなくて、イメージが湧かないのですが…、どんな感じで進めていくのでしょうか?

10代の生徒たちに立場や年齢が近い大学生や社会人のボランティアスタッフが学校に赴き、講義を行います。

グループワークが入ることもあって、「一方的に話す」というよりは「一緒に考える」という感じですね。

▲講演では、自分や周りの人が性について悩んだ身近な体験談も話しながら進めていきます。

1「性と健康」をテーマに話をするのですが、そこをいかに「エロいこと」「恥ずかしいこと」という印象をもたせず、それでいて「身近なこと」として捉えてくれるかというのがひとつのポイントです。

——なるほど。男女一緒に行うのですか?

別々にしてほしいという要望があれば別々に行いますが、ほとんどが男女一緒ですね。

「カップルがいて、お泊りをすることになり、性行為を持ちました。

そのあと、女の子は生理がこなくなってしまいました。
男の子はおしっこするときに痛くなり、悩んでいます。

みんなだったらどうしますか?」、そんな感じの導入で始まり、みんなに考えてもらいながら、性感染症や妊娠を予防するためにはどうしたらいいか、困ったときにどうしたらいいか、コンドームの使い方や、妊娠を確かめる方法なども話しています。

講義形式で話しをするだけでなく、○×クイズやゲームも取り入れながら、わかりやすい内容で伝えています。

▲グループワークでは、スタッフがファシリテーターとして進行をサポートしながら、生徒たちが真剣に話し合います。

——ゲームですか?

性感染の広がりを知ってもらうための「水の感染ゲーム」というゲームです。

20人ほどに水の入ったコップを持ってもらうのですが、そのなかの一つに、わからないように前もってアルカリ性の薬品を投入しておきます。
薬自体は無色透明なので、薬品の入ったコップも見た目は真水と同じ。

みんなでコップの水を半分ずつ交換する作業を数回してもらった後、コップの水を調べます。

検査の試薬を入れると、アルカリ性の水は真っピンクに変わり、大体半分くらいの子が感染していることになります。
「まさか自分の水は感染していないだろう」と思っていても、知らない間に感染していた。じゃあ、どこで感染したの?はというと、わからないんですよね。

このような形で性感染症の広がりやこわさを擬似体験することができます。

▲性感染症のひろがりを疑似体験する、水の感染ゲームの様子。

——おもしろいですね。

あとは、男女が対等な関係を築くことの大切さについても伝えています。

パートナーのどちらか片方が「嫌だ」ということをやるのは良くないよ、「性」についてきちんと話し合えたり、嫌なことはきっぱり「NO」といえる関係を築こう、ということを伝えています。

——女性は受け身になりがちですが、嫌なことははっきり嫌だと伝えること、そこが伝えられない・伝わらない関係だとしたらそれってちょっと不健康な関係なんじゃないか、ということを考えるきっかけにもなりますね。

男性の場合も、妊娠や性感染症について正しい知識を得ることで、知らないときよりもずっと慎重になれるように思います。

中高生に対する性教育の実施で、約10年で中絶率が1/3に減った秋田県の事例

私たちが中高生の性教育プログラムに取り組むにあたって参考にしているのが、秋田県での事例です。

秋田県では、2000年度より県の教育庁・教育委員会が地元の医師会と提携して、性教育講座を県内の中学・高校で実施し、県内のすべての中高生が正しい性の知識を得る機会を設けるようにしました。

講座を始めた2000年度に秋田県内の10代の中絶率は18.2%だったのが、2011年度には5.3%と1/3にまで減少したんです。

——すごいですね。

今回のチャリティーで、5,000人の中高生たちに正しい「性」を伝えます!

——正しい「性」の知識を得ることで、「どう生きるか」が判断や選択ができる。
すごく大切なことですね。

最後に、今回のチャリティーの使途を聞かせてください!

今回のチャリティーは、性教育プログラムを実施してくれる新たなスタッフの育成費用として使わせていただきます。

現在のスタッフは学生と社会人が半々。
学生であれば、看護系学生や教員を目指している人たち、社会人であれば助産師さんや看護師さんなど「性」を若い世代に正しく伝えていく大切さを感じて活動に加わってくださる方が多いです。

今年度、新たに5,000人の中高生に「性」の正しい知識を伝えていくことを目指しています。
そのためのスタッフ5名の育成費15万円を集めたいと思っています!

——わかりました。貴重なお話をありがとうございました!

▲杉並区成人祝賀のつどいでの啓発活動にて、スタッフ・関係者の皆さんとパチリ!自分たちも学び、楽しみながら活動しています。

“JAMMIN”

インタビューを終えて〜編集後記〜

「性」が今回のテーマ。なかなか伝え方が難しく、苦戦しました。
…原因を探ってみると、「性」は私たちの生と切っても切れない事柄でありながら、やはりどこか触れてはいけないようなタブーな風潮があるわよね〜と感じました。

「性」の知識は必須。ここに異論を唱える人は少ないと思います。

成長の過程で、この「タブーな風潮」に負けず、正しい知識を知る機会があれば、その人のその後の人生において、「性」のネガティブな面や要素ではなく、ポジティブな面や要素にフォーカスし、生きる事そのものをもっと楽しんでいけるのかもしれないと感じました。

若い世代に正しい性の知識を伝えるための今回のチャリティー、皆様どうぞご協力ください!

NPO法人ピルコンのホームページはこちら

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“Think about LOVE&LIFE”。ピルコンのキャッチフレーズと共に描いたのは、ペンギンのカップル。

ペンギンには、一生涯同じ相手と添い遂げる習性があり、「相手を思いやる誠実な愛」を表現するためにペンギンをチョイスしました。

さらに、2羽が同時に「LOVE&LIFE」と語り、互いを思いやるというメッセージ性を強めています。

Design by DLOP

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チャリティー入金報告

【THANKS】NPO法人ピルコンより御礼とメッセージをいただきました! – 2017/7/2

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