(TEXT BY KEIGO TAKAHASHI)
あなたが、今一番「やってみたいこと」に何がありますか?
仕事でのキャリアアップ、家族・恋人との旅行など─、
自分一人で出来ない「したいこと」を実現するのに必要となるスキル。その一つが「交渉」だと考えています。
私たちは常に誰かと関わり合って暮らしています。もし、旅行したいとなったら、勤務先(バイト先)や家族、旅行会社との交渉が必要だし、こちらの希望を正確に相手に伝え、合意しなくてはなりません。
ただ、交渉は相手があるもの。自分の思い通りにならず、一筋縄ではいかないこともあります。
私たちは義務教育で「交渉」という科目があった訳ではないし、誰かから教わることも多くありません。
そして、無理だと思えるような困難も「交渉」を通じて、社会を良くすることも出来る─、今週のチャリティーを通じて、そんなメッセージを感じ取ってもらえれば嬉しいです。
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「私たちは、最初から“無理”という固定観念を持たないようにしながら、『自分たちの手で自分たちの地域を守りたい』─、という考えを大切にしてきました」
今週のチャリティーはNPO法人メッシュ・サポート。
メッシュ・サポートは沖縄に事務所を構え、日本で唯一、寄付を財源とした「救急ヘリ」を運営しています。メッシュ・サポート事務局の塚本さんに詳しい話をお伺いしてきました。
沖縄県本島北部地域は、農作業中の事故や交通事故等の救急患者が多発する地域です。また、2007年に医師不足に伴い、それまであった7つの診療所が閉鎖となりました。
この地域で生活を送る人々は、市街地の病院へ救急車で最長2時間もかかる所があるなど、困難な医療環境を強いられています(NPO法人メッシュ・サポートHPより)
こうした医療問題に関して、海外では普及が進んでいたのが、航空機医療。遠方の救急現場へいち早く医師や医療資材を投入し、早急に救命治療を開始できることで、救命率のアップと社会復帰のスピードを早めることが可能となります。
航空機医療の中には「ドクターヘリ」という、国が主体となって推進するプロジェクトがあります。各都道府県に医療機器を搭載したヘリを配備し、高度救命病院への搬送を支援しています。しかし、沖縄には特有の課題がありました。
「沖縄にも、政府が主体となったドクターヘリがあります。しかし、ドクターヘリを運営するには高度救命病院でなければならないとい施設基準があります。
沖縄県の高度救命病院は人口の多い沖縄本島の中南部に集中していることから、メッシュは高度医療が不足する北部地域にて活動しています」(塚本)
(沖縄県では様々な機関によって救命医療が行われている)
(現場での救命活動の様子)
これらの沖縄が抱える課題を解決するために、メッシュ・サポートでは自分たちで救急ヘリを運営(自主運航)をスタートさせます。
自主運航することによって、離島への専門医の派遣や、医療物資の搬送など、既存の搬送手段の枠に捉われず、僻地・離島の医療ニーズに則した効率のよい航空医療活動を実現させるという狙いがありました。
しかし、自主運航と言っても「言うは易く行うは難し」─、高額なヘリや医療機器をどう手に入れたのでしょうか。
「救急ヘリを自主運航するまでに、かなりの交渉をしました。現在使っているヘリは新品で買うと2億4千万円しますが、整備がちゃんと行き届いている中古品をディーラーと一緒に探し、8千万の機体をつかえることになりました。
私たちのヘリは24年落ちのものですが、ヘリは厳密な検査が義務づけられていて、きちんと整備をすることで、中古品でも十分に目的を達成することはできます。
そして、医療機器をヘリに据え付けるとカスタマイズの費用が高額になるため、現場に持ち運ぶことも考え、ポータブル式の医療器材を搭載しています」(塚本)
(救急ヘリ「メッシュ」内部の様子)
「さらに、8千万円という額のヘリを一括で買うことが難しかったので、協賛してくれる企業さんを探し、保有してくれるよう交渉を続けてました。
現在は、携帯電話の料金システムを開発する会社が、私たちの取り組みに共感し、リースとして貸し出してもらっています」(塚本)
リースによって、いよいよ沖縄の空を飛ぶことになった救急ヘリ。日々の運営にかかる経費も安くはありません。
「年間9千万円かかる維持管理費用のうち、これまでは寄付のみでの運営せざるを得なかったため、初めの5年間は資金を募っても、運営費をまかなうことはできず、運航と運休の繰り返しでした。
6年目にして、3年の期間限定ではありますが、活動地域の市町村から運営費の約半額を補助してもらえるようになり、残り半分を寄付にて運営しています。
メッシュの運営は、活動を支援してくれるサポーター会員(現在、約7,000人)の方からの会費と、企業さんやチャリティーコンサートからの寄付などの支援によって運営しています」(塚本)
様々な交渉を経て、実現してきたメッシュ・サポート。その原動力となっているのは、シンプルな考え方でした。
「私たちは、最初から“無理”という固定観念を持たないようにして、『自分たちの手で自分たちの地域を守りたい』─、という考えを大切にしてきました。
医療従事者の想いとしてある、『救える生命を救いたい』─、これらの2つの想いを大切にして活動しています」(塚本)
メッシュ・サポートの活動、皆さんの目にどう映ったでしょうか?
沖縄県内を縦横無尽に飛び回り、約年間200件を超える出動要請に応えているメッシュ・サポート。行政に声をあげるだけでなく、自分たちで考え実現させている点が本当に素晴らしい!
メッシュ・サポートの活動が、皆さんの日々の「やりたいこと」を実現するためのヒントになれば、嬉しいです。
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最後に、メッシュ・サポート事務局の塚本さんからのメッセージをご紹介します。
「私たちがヘリを一度飛ばすための燃料費用は1回あたり3万5千円程度。大体ヘリの燃費が5km/L、1Lあたりの200円くらいなので、700円のチャリティーを通じて、3.5km遠くまで航空医療が届くようになります。
皆さんの応援を通じて、デザインにあるように、沖縄県のWHEREEVER「どこへでも」行けるよう、応援よろしくお願いします」(塚本)
(「メッシュ」と沖縄国際映画祭にて募金活動をしてくれた専門学校生たち)
【 THANKS MESSAGE 】NPO法人メッシュ・サポート より御礼とメッセージ | JAMMIN(ジャミン)
法人名:NPO法人メッシュ・サポート
活 動:沖縄に事務所を構え、日本で唯一、寄付を財源とした救急ヘリ「メッシュ」を活用した医療活動に取組む非営利法人。
住 所:沖縄県那覇市真嘉比1-4-1
H P:http://www.meshsupport.jp