夫婦は20年前に別々に来日し、日本で出会って結婚し、2人の子どもが生まれました。
しかし、7年前に非正規滞在であることが発覚します。長男は高校3年生、次男は小学2年生。子どもたちは、日本で生まれ育っているので日本語しか話せません。また、フィリピンには、生活の基盤はありません。
一家は、日本での滞在を希望したため、現在は「仮放免」(一時的に収容をされていない)状態です。長男は、将来介護福祉士になることを希望していますが、このままでは仕事に就くことは出来ません。
将来に不安を抱えているけれども、日本が好きだし日本で自由に暮らしたい、と語っています。
(出典:2014年8月18日 NHKニュース7・NEWS WEB24など)
冒頭に紹介したのは、昨年放送されたニュースの一部です。このニュースを見た人のtwitter上の反応は、本当に様々でした。
帰る術がない人がいるし、在日中に生まれた子供なら向こうでは過ごしていくのが難しい。ライン整備が必要では(@moral_manner)
働き手がますます減る日本。言葉もできるし何をためらうのか(@HrsZzr1100)
不法入国や不法在留の時点で違法なんだから強制送還でよいと思う(@FuaVenus)
色々事情はあるだろうけど、ちゃんとルールに則って滞在して欲しい。その方がお互いの為。(@toshi_arichang)
仮とかつけるから中途半端な対応になる。いいのかダメなのか分けるべき(@yowakinall)
いいのか悪いかなんて、ケースバイケースだよ!(@sekaik_no_sanada)
見た人によって、意見が分かれる非常にナイーブな問題であることが分かります。
母国以外の国に入国し、滞在するためには、在留資格(ビザ)が必要です。
在留資格とは、在留中に行うことの出来る活動や身分を示したもの。日本の場合、就労が認められるもの、認められないものを合わせ、現在は約30種類の在留資格があります。
また、在留資格ごとに1年や5年といった滞在期間が定められています。定められた期間内の滞在を「正規」滞在、この期間を超えても帰国せずに暮らし続けることを「非正規」滞在と言います。
国内で暮らす非正規滞在者は、2015年現在、約6万人いると言われています。過去最大だったのはバブル期の約30万人。ここ最近は減少傾向にあるものの、思ったより沢山いると感じた人は多いのではないでしょうか。
法務省:本邦における不法残留者数について(平成27年1月1日現在)
非正規滞在が発覚した場合、通常は強制退去(=強制的に国外へ退出させること)の手続きが踏まれ、施設に収容されるなどした後、母国へ送還されます。
しかし、特別な事情を抱え、日本に留まることを希望する場合は、すぐには送還されず、施設へ収容されないケース(仮放免)も存在します。初めに紹介したフィリピン人の一家は、まさにこの仮放免の状態にあるのです。
非正規滞在世帯の父親・母親の多くが、80年代後半から日本に出稼ぎにやってきた外国人労働者でした。
当時、バブル真っ盛りだった日本。工場や建築現場、飲食店などが彼らの労働力を必要とし、また、彼ら自身も、母国の家族の生活を支えるために働いていたのです。
90年代以降、彼らは結婚や出産を経て、日本で生まれた子どもの「お父さん・お母さん」になります。しかし、日本には彼らのような存在を受け入れる在留資格がありません。
このため、超過滞在(=非正規滞在)という手段を取らざるを得ませんでした。日本の場合、非正規滞在の親から生まれた子どもは、生まれたその日から非正規滞在となります。
そのため、親のみならず、子どもたちも健康保険への加入や住所を持つことが出来ません。また、仕事に就くことも出来ません。
(出典:在留特別許可と非正規滞在外国人 | APFS – ASIAN PEOPLE’S FRIENDSHIP SOCIETY)
彼らが、再び合法的に滞在するためには、例外的措置として許可される「在留特別許可」を得る必要があります。
しかし、日本には誰に在留が認められて、誰に認められないのかを定めた基準がありません。
そのため、在留資格を持たない非正規滞在の子どもたちが、「在留特別許可」を得て、日本で普通の生活をすることは想像以上に難しいことなのです。
日本の制度はしっかりしている、と想像していたのにもかかわらず、この様なケースバイケースの対応が求められているのが現状です。
(東京入国管理局前にて署名を集める子ども達)
今週のチャリティーは、NPO法人ASIAN PEOPLE’S FRIENDSHIP SOCIETY(APFS)。
APFSは、豊かな多文化共生社会の実現を目指して、1987年に設立されました。外国人住民の相談や研究活動など、日本人と外国人がともにより良く暮らしていくための活動を幅広く行っています。その一環として、非正規滞在の子どもたちやその家族への支援活動も行っています。
1992年には、初めて、在留資格を求めていた人々への一斉出頭支援を行いました。その結果、10家族42人に在留が認められました。
そして、2009~2011年には、退去強制令書が発付されている家族の支援を行い、さらに11家族39人に在留が認められました。現在も在留許可を求める10人の子どもたちの支援を行っています。
(子ども会議で自らの課題と解決策を話し合いました)
先程もご紹介しましたが、非正規滞在の子どもは、健康保険に加入することが出来ません。また、高校受験の資格もあるか不透明なままの子どももいます。
APFSは、あらゆる子どもが自分の夢を育める社会の実現を目指し、今年の8月から「子どもの夢を育む100日間行動」を行っており、現在もその期間中です。
100日間行動では、子どもからの要望を聞く「子ども会議」の開催、国会議員へのロビーイング、街頭活動、法務省の要請などを行っています。今週のチャリティーは、その100日間行動に関わっている家族と、子どもたちの活動費用として使われます。
日本に不法に超過滞在することは認められるべきではありません。APFSも違法な滞在を助長している訳ではありませし、私も同じです。
しかし、特別な事情を抱える人、特に何の罪のない子どもが、国境を越え親と離れ離れになってしまっても本当にいいのでしょうか? 親と離れ離れになった子どもにとって、プラスになることはありません。
どのような子どもであっても、健やかに生き、夢を追い求める権利は誰もが保障されているものだと思うのです。
100日運動に参加する子ども達は、日本で「プロ野球選手」「サッカー選手」「介護福祉士」「看護師」「美容師」「アニメーションの制作」など、それぞれの夢を育んでいます。
親と離れ離れになるかもしれない子どもたちが、これからどうすべきか。あなたの力で、考えていくための”きっかけ”を作ってみませんか?
TEXT BY YOSHINO FUJIOKA
(在留特別許可を求める子どもたち。PHOTO BY THE JAPAN TIMES)
法人名:特定非営利活動法人ASIAN PEOPLE’S FRIENDSHIP SOCIETY
活 動:東京に事務所を構え、豊かな多文化共生社会の実現を目指し、日本人と外国人がともにより良く暮らしていくための活動を行う非営利法人。
住 所:東京都板橋区大山東町56-6 メゾーネ大山301
H P:http://apfs.jp/
【 THANKS MESSAGE 】NPO法人APFSから御礼とメッセージ JAMMIN | Social Wear Brand